今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
それに対してしどろもどろの返事を返す私。


「ああさっきのは……」


翔くんがニッコリと自然な笑顔を見せた。


「夜道だからチーが転ばないように手を繋いでたけどそれがどうかした?」


苦しい言い訳だけど、彼の余裕な態度がその場の空気を和ませた。


「なんだ、そうだったのか」


父は何故か納得したようにハハッと笑う。


えー、今の説明でほんとにセーフだったの?そりゃ確かに翔くんは普段から過保護だけど。


夜道で転ぶとか、私がどれだけどんくさいと思われているんだか。


それにしても、笑顔ひとつでこの場を強引に乗りきろうとする翔くんにびっくりした。


私と違って、かなり肝が据わっているのかな。


でもとりあえずは助かったみたいでホッとした。


「母さんなら今日は先に帰ってるよ」


「そ、そっか」


ようやく父と目を合わせることが出来た。


「父さん、重そうだね。持つよ」
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