今日もお兄ちゃんの一途な恋に溺れる。
そんなことを聞いてくるわりに軽い口調だった。


だから、なんとなく答えやすい。


「誰にも言わない?」


「うん、言わないよ」


「ほんとにほんと?」


「絶対、内緒にする」


彼は真面目な顔で頷く。


以前、私のせいで秘密がバレて大変なことになった。だけど、西原くんは信頼できる気がする。


愛華さんの時とは違うはず。


自分の中にだけしまっておくのは限界で、誰かに聞いてほしい気持ちもあった。


だから、西原くんには少しだけ話してみようかなって思った。


「大変……なこともあるけど、今はお兄ちゃんを信じて待つしか無いのかなって」


「ふうん」


彼はつまらなそうに唇を尖らせる。


「付き合ってるってことだよね?」


「……うん」


「そのわりには、楽しそうじゃないね」


「……それは、いろいろあって」


「そうか、やっぱりな」


「なにが?」


「いやなんでもない」


「え、なに?言ってみて。言ってくれなきゃわからないし」


彼は腕を胸の前で組んで眉を顰める。


「いや、瀬戸さんはやっぱり妹なんだなって思って」


「確かにそうだけど。どういう意味?」


まわりくどい言い方をされてもますますわからない。

 
「それにお兄さんはお兄さんなんだなと思っただけ」


意味深というよりも嫌味に聞こえて内心ムッとした。


「恋人にはなれないってこと?」


「たぶん今のままだとね」


「……」
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