【完】王子様系男子の哉斗くんは、毎日会いに来る。
「まず、美央ちゃん……『ごめんなさい』」
哉斗くんはもう一度、頭を下げると手を動かした。
『俺は恋人は昔も今もいない。恋愛すら、興味なかった』
え……でも、あの手紙は……?
『手紙の差出人である里村ももは、クラスメイト。というか付き纏ってくるストーカー』
『ストーカー?』
哉斗くんは頷き、ため息を吐く。
『自分のこと可愛いって思ってて自分はお姫様だと勘違いしている。それで何度も何度も好き好きって言って来ていた』
私が哉斗くんと出会う前から、彼女は哉斗くんが好きだったんだ……なんだかモヤモヤする。
『曖昧な言葉で断っていたのは俺も悪いと思う。だけど、好きなんて気持ちは一切ない。迷惑していたくらいだ。俺の行動が招いた結果、美央ちゃんを傷つけてしまった……本当なら、身を引かなきゃいけないと思う』
哉斗くんは一度深呼吸をする。
『俺が可愛いと思うのも好きだと思うのも美央ちゃんしかいない』
えっ?好き?可愛い……?
そんなはず、は……っ
『俺は、美央ちゃんが好きだ。俺と付き合ってください』
そう言った哉斗くんはまたお辞儀をする。私は、彼に言われたことを頭の中で整理をする。
私のことが好き……。
心の声でそう言うと、だんだん体温が上昇し身体が熱い。ドキドキと心臓が鳴り響き何がなんだか分からなくなる。
『美央ちゃんと恋人になりたい』
もう一度言った哉斗くんは私の手を握り、手のひらに二文字書く。くすぐったい。
私もちゃんと正直に素直な気持ちを伝えなきゃいけない、よね。
『私は、好きってよく分からない。だけど、哉斗くんは好き。家族に対する好きとは違うの……だから私も』
私は親指と人差し指を開いて喉に当てる。
『好きです』
その手を前に出し、つまむように指先をつけた。
私は、哉斗くんが好きだ……。