あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
しばらくの間、アキはじっと動かず顔中に音を立ててくちづけを降らせていた。
額、まぶた、鼻先、頬―――
ゆっくりと降りてきた唇は、最後に唇に重なり、なだめるように食みながら啄んできた。
滲んだ瞳から涙がひとしずくこめかみへとこぼれ落ちる。するとそれを追いかけるように、アキがペロリと舌で舐め取った。
「ぁっ、」
彼の小さな動きにすら敏感に反応して上げた声。
まるでそれが開始の合図というように、彼が動き出す。
待って――、と言おうとした声は、すぐさま嬌声に変わった。
「ぁっ、アキっ……!」
広い背中に腕を回して彼の背中にしがみ付く。
「可愛い、吉野」
艶やかな中低音が耳のすぐそばで注ぎ込まれる。
その声が、目を閉じていても彼の色香を伝えてくる。
「好きだ、吉野」
ストレートな愛の言葉が胸に響く。
胸の奥がきゅんと甘く高鳴ると同時に、彼と繋がる場所もきゅっと甘く疼く。
「吉野は……?」
「わっ、わたしは―――、あぁんっ……」
「ほら、ちゃんと教えて」
わたしの答えをわざと邪魔するようなことをしたくせに、そんなことを言う。
なんて意地悪なのっ!
頭の片隅でそう叫んだ言葉は、与えられる愉悦にあっという間に流されてしまう。
「吉野」
いつもよりも少し低い艶やかな中低音。
窘めるような、それでいてひどく甘やかな声。
その声に最後に残った理性も意地も、すべてを溶かされていく。
「わ、…わた、しも……アキが……すき…大好き……」
わたしがそう言った途端、彼は掠れた声で「僕も大好きだ」と囁くと、助走は終わりだとばかりに激しくなった。