あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
(この……、エロドラ絶倫王子めっ……!)
あどけない寝顔を見ながら声に出さず毒づく。
意識がハッキリとしてくると同時に、体の節々の痛みに気付く。腰が重だるくて、今「立て」と言われても立てる気がしない。
最後は意識を飛ばすように眠ってしまったので、よく覚えていない。
ていうか、全編に渡って二度と思い出さなくていいっ!
これが若さというやつなのか……。あとひと月で三十になろうかという女と、二十代半ばの男の違い……?ふたつ(と数か月)しか年齢は違わないはずなのにっ!!
思い出したくないと思えば思うほど、生々しく思い出してしまうのは、今もわたしたちが何も身に着けていないからかもしれない。シーツの中で肌と肌が触れ合う感触がそれを教えてくれる。
(あ~~っ、もうーーっ!!)
声に出して叫びながら顔を覆って悶絶したいのに、わたしの肩に頭を置いて熟睡している彼のせいで出来ない。
昨夜の激しい情事のことは置いておいても、仕事で疲れている彼を起こすのは、さすがに忍びないと思ってしまうのだ。
せめてもの抵抗で、両目にギュッと力を込めて下唇をグッと噛みしめ、羞恥の悶絶に耐えてみた。
すると―――。
「……クッ、」
ん?今何か聞こえたような……。
まさか、と思うと同時に「くくくくっ」という笑う声と振動が伝わってきた。