あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
恐らくCEOとの親子バトルも、彼なりに神経を使うことだったんじゃないかな。
大人になってから自分の内面をさらけ出すのは、結構勇気がいることだ。

その証拠に。

『父と僕の親子喧嘩に巻き込んでしまってごめん。あなたにはかっこ悪いところばかり見せてるな……』

ここに来る途中、ハンドルを握るアキは、情けなさそうにそう言った。

別に全然かっこ悪いなんて思ってない。むしろ、自分の弱いところを素直に認めることが出来るのは中々出来ることじゃない。きっとそれは女性より男性の方が難しい気がするし、もっと言ったら、アキのように上流階級で育った立場のある人ならなおさらだろう。

わたしがそう言うと、アキは少し驚いた顔をした後『ありがとう』と言ってくれた。

そこまでは良かったのだけど。
問題はホテルの部屋に入ってからだ。


『とことん味わい尽くすつもりでいるから―――覚悟して』

そう言った彼は、その言葉通りわたしを夜通し離さなかった。

夜の東京湾に浮かぶレインボーブリッジ。
アキの車で連れて来られたホテルで、わたしがそれを楽しめたのは、ほんの一瞬。

『吉野の好きな橋だ。ちゃんと見て』

口ではそう言ったくせに、アキは、容赦なくわたしを揺さぶり続けた。
まるで『橋じゃなくて僕を見て』とでも言うように。

彼はわたしを貪欲に喰らった。

部屋に入ってすぐ、夜景に吸い寄せられた窓辺で。
それから、ベッドの上でも容赦なく。

立て続けに二度も激しく愛されたわたしが、指一本も動かせないほどぐったりとしていると、『シャワーしたかったんだよね?』と抱えられてバスルームへ。『洗ってあげる』と言いながら、好き勝手に触れられて喘がされて。

『今日は「初めてじゃない」から問題ないな』と言うつぶやきの意味を、わたしが理解したのはもう熱い楔を打ち込まれたあとだった。

のぼせかけたわたしを、入った時と同じように抱えてバスルームから出たアキは、わたしに水を飲ませてくれたり冷たいタオルで顔を拭いてくれたりと、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。―――ところまでは良かったのだけど。

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