あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
「なんかぁ、イケメン三人衆って感じでしたねぇ」
『三人衆』なんて年寄り臭い言葉のチョイスが引っかかりつつも、森を窘めるようにジロリと睨みつける。
なのに彼女はまったく気付くことなく、彼らが消えた方向を見つめてたままうっとりと話し続けた。
「結城課長の爽やかビジネスマンな感じもええですけどぉ、統括さんのぉクールな感じも捨てがたいと思いませんかぁ?一見冷たいのにぃ、実は付き合ったら自分だけにはベタ甘とかだったらぁ、もぉたまりませんねぇ~」
おお、さすが森ちゃん。イケメンへの妄想力がパナイわ。
なんて、注意することも忘れてうっかり感心してしまう。
「でもやっぱり、のんのイチオシは当麻王子ですぅ」
うっとりとした目をした森ちゃんの語りは止まらない。
「当麻CEOのご子息でぇ、国内一の大学を卒業したあと【トーマビール】に入社しはってぇ、最初の一年で営業トップ、二年目ぇには企画部ですんごい業績を上げはってぇ三年目ぇにはホールディングスの方に移籍ぃ、で、そのあと去年の秋にCMOに就任するまでは、欧州支部長として赴任してはったんですってぇ。超サラブレッドのどエリート様ですよねぇ。雰囲気から何からまさに『王子』って感じですぅ」
間延びした語尾でのんびり喋っているのに、ものすごい風圧?を感じるのは何なんだろう。
そもそも、この子ってば一体、どこでどんなふうに情報を掴んでくるんだか。まったく不思議すぎる。
わたしが目を瞬かせていると、突然くるりと森が私の方に顔を向けた。