年上王子の不器用な恋心
「何言ってるんだ。好きじゃなきゃ付き合おうなんて言わないだろ。あゆは好きでもないやつと付き合えるのか?」
「私は無理だよ」
「だろ。そういえば、自分から付き合うかなんて言ったのはあゆが初めてだな」
「そうなの?」
意外な言葉に私は大きな声を出してしまった。
千尋くんが付き合おうって言ったのが私が初めてだなんて驚きだ。
嬉しくなり顔がにやける。
「そうだよ。あー、そうか。俺の心の中にずっとあゆって存在が住み着いていたから、今まで長続きしなかったのか」
納得したように呟き、私は頬を膨らませた。
千尋くんはたぶん、独り言のつもりで言ったんだろう。
千尋くんは当然、モテるだろうから恋愛事情を聞いても嫉妬するだけだからあえて聞かなかった。
でも、さっきの言葉で判明したことは、今までは全部女の人から付き合ってと言われたことと、その人たちと長続きしなかったことだ。
「何、膨れてんだよ」
膨れっ面に気づいた千尋くんが私の頬を人差し指でつつく。
「だって、長続きしなかったとか千尋くんの過去の恋愛なんて聞きたくなかったもん」
「それであゆは嫉妬して膨れていたんだ」
千尋くんはクスクス笑う。
「もー!私ばっかり千尋くんのことが大好きじゃん。それが悔しい!」
分かってはいたけど、好きの比重が私の方が断然重たい。