年上王子の不器用な恋心
そして、一年後。

雲ひとつない晴天に恵まれた結婚式当日。

メイクさんの手によって綺麗に仕上げてもらった自分の顔が鏡にうつる。
私の両耳には千尋くんからもらったピアスがキラリと輝いている。
千尋くんは違うのでもいいだろと言ったけど、私はこのピアスしか考えられなかった。
髪の毛も巻いた後に結い上げられ、純白のウェディングドレスを身にまとい、椅子に座っている。

「あゆ、すごく綺麗よ」

私のそばに来たお母さんが微笑みながら言う。

「ありがとう。何か自分じゃないみたいなんだけどね」

改めて自分の姿を鏡で見て肩を竦めた。

昨日の夜、家族三人で晩ご飯を食べた。
いろんな思い出話に花を咲かせ、ここがチャンスとばかりに今まで大切に守り育ててくれた両親に感謝の気持ちを伝えた。

『お父さん、お母さん。今まで大切に育ててくれてありがとう。改まって言うのは恥ずかしいけど、お父さんとお母さんには感謝しています。お父さんにはいつも口うるさく小言を言われたけど、私のことを思って言ってくれてたんだよね。お母さんはいつも私の味方になってくれて支えてくれた。私は二人の娘で本当によかったです。千尋くんと幸せになるので、見守っていてね』

結婚式でも手紙を読むつもりだったので、簡単に自分の気持ちを言うと、目を潤ませたお父さんが急に立ち上がって書斎に駆け込んだ。

『お父さんたら……。あゆ、千尋くんと幸せにね』

苦笑いした後、お母さんはそう言って優しく私を抱きしめてくれたんだ。
< 131 / 134 >

この作品をシェア

pagetop