年上王子の不器用な恋心

どうしてそんな風に考えるんだと頭を抱えた。
うるさい場所はあまり好きではないのは確かだ。

俺はあゆと一緒に過ごせて楽しかったけど、それが相手に伝わってなかったことに情けなくなり、ため息をついた。
まずは泣き虫なお姫様を笑顔にするか。

あゆの頬に伝う涙を拭い、優しく宥める様に話しかける。

「俺はあゆが望んでいることを叶えてあげたかった。俺たちは付き合っているんだろ」

そう言えば、泣き止むどころかさらに泣き、そのまま抱き着いてきた。
ポンポンとあやすように背中を叩きながら、つい、余計なことを口走ってしまった。

俺に向かってヒドイと抗議するあゆの顔を見て思わず吹き出した。
二十歳になっても鼻水垂らすなんて昔と全然変わらない姿に、何の抵抗もなくティッシュで鼻水を取ってやった。

そして、先程買ったプレゼントの箱をあゆに渡した。
あゆがジュエリーショップで立ち止まり、じっと見つめていたピアス。
初デートのプレゼントにちょうどいいと思ったんだ。

箱を開けた時のあゆの驚いた顔を見て、あのピアスを買ってよかったと心から思った。
あゆはそのピアスが入った箱を大事そうに胸元へ抱えお礼の言葉と共に「一生の宝物にするね」と微笑んだ。
その顔に見惚れていたら、あゆが俺の方に身体を寄せてきて、自然な流れで抱きしめていた。
改めて体格の差を感じ、守ってやりたいという庇護欲に駆られていた。
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