年上王子の不器用な恋心
そう言えば、人生で初めて女性にプレゼントを買った。
今まで付き合った彼女に買ってほしいとせがまれたことがあったけど、その人に買う意味を見出だせなかった。
今思えば、ジュエリーを買ってあげたいと思うほど、愛しい存在ではなかったということなんだろう。
そんな考えを覆すほど、あゆは俺にとって何よりも大切で愛しい女性なんだと改めて気づかされた。
幼いときから真っ直ぐに『千尋くん大好き』と言って俺だけを追いかけてくる純粋なあゆ。
だから迂闊に手は出せないんだ。
「相変わらず、千尋は秘密主義だな」
そう言って山村は苦笑いする。
「そんなことはないだろ」
「そんなことあるよ。自分のことは全く話さないだろ。俺が近況を聞いても『特に何もない』の一言で済ませるから全く面白味がない!もう少し、心を開いて喋っても罰は当たらないぞ」
山村の言葉に、そういえば翔真にも同じようなことを言われたことを思い出した。
あまり、自分のことをペラペラ喋りたくないだけなんだが、これが秘密主義と言われる要因なんだろう。
「お前、彼女が出来た時に自分の気持ちとか伝えないとあとですれ違って大変なことになるぞ」
脅すように言われ、思わず苦笑いしながら肩をすくめた。
「忠告ありがとう。肝に銘じておくよ」
モヒートを飲み干し、席を立つ。
「ごちそう様」
会計を済ませ、バーを出た。