お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
健くんも同時に、碧が見ているほうと同じところを見ていて……。
なにかあったのかと思い、わたしもうしろを振り向くが……特になにもないように見える。
「……碧?健くん?」
声をかければ、はっと我に返ったように少し落ち着きを取り戻す碧。
残りの自分のアイスを全部口の中へと入れると、「お嬢、少し走れますか?」と聞いてきた。
「え?」
「さっき追跡者を撒いたはずなんですけど、見つかったみたいなんです」
追跡者!?
い、いつから!?
『さっき追跡者を撒いたはず』という言葉ですぐに思い出したのは、碧がわたしの手を引いて早足で歩いていたこと。
あれは……追跡者に気づいていたからだったんだ。
わたしも残りのアイスを大きくひと口で食べて。
「クソ猿は早く猿山に帰れよ」
碧は最後に小さな声でひと言健くんに言うと、わたしの手をとって走り出した。
追跡者なんて、ヤクザ関係の人の確率が高い。
このままあそこにいれば、健くんを危険に巻き込んでしまうかもしれないわけで。
わたしは最後になにも言わないでおいたのに……。
「巻き込んでんの俺だわ。ごめーんね」
なんと、健くんも走ってきて、わたしたちの隣に並んだ。