お嬢は若頭のぜんぶを知りたい。
***
強い日差しに、暑い気温。
気づけば、8月。
期末テストが終わり、夏休みに突入した。
あの襲撃事件のことで最後に聞いたことは。
一条組の組長さんは手術をし、成功したが……現在も意識が戻らず植物状態となってしまったらしい。
まさか、こんなことになってしまうなんて。
……すごく、心配だ。
一方で、碧とはまったく連絡がとれない。
お父さんとも連絡がとれなくて、家にいる翔琉さんに毎日『今日は帰ってくる?』と聞く日々。
それで、いつも決まって翔琉さんの質問の答えは『わからないです』、そのひと言で。
日々不安は募るばかり。
襲撃事件の時に、ヤクザの世界はいつどこでどんな危険が起こるかわからない、ということを再認識させられた。
碧も、わたしの前からいついなくなってしまうかわからない。
……ヤクザの世界は、とても危険。そんな危険な世界に彼はいる。
……早く碧に会いたい。
無事な姿をこの目で見て安心したい。
「茉白!ここわかんないよ~!」
「茉白ちゃん俺はぜんぶわかんない~」
凛ちゃんと健くんの声が聞こえてきて、はっと我に返る。
「……どこ?」
すぐにシャーペンを持って、前に座る2人のノートを見て、わからないというところを教えていく。