魔法の恋の行方・キスって何?(シリーズ1 オルロフとエリーゼ)
<湖の畔の小屋・16時50分>

オルロフは指示された部屋のドアを開けた。

女の子の寝室だった。
ロートアイアンで細工された
小さなベッドには、白いレースの
カバーが掛かっている。

細かい銀の細工が美しい、楕円形の鏡。
その前のチェストには、ピンクの
小花が活けてある。
床は毛足の長い白いラグが敷いてある。
窓にはレースのカーテンと、薄いピンク色のカーテン。
そして、ラベンダーが微かに香る。

「妖精の寝床か・・」
オルロフは微笑んだ。
かわいらしい。

「早く!!着替えたら、こっちに来てっ!!」
妖精がドアをガンガン叩く。

まったく・・強い。
オルロフは毛布をかぶり、濡れた
衣服を手に持ち部屋を出た。

「暖炉の前に広げて置けば、すぐ乾くから!」

妖精は命令口調だ。
オルロフは従った。

「陽が落ちる前に、出て行ってもらわないと!」
妖精はそう言いながら、戸棚から
大きい瓶とグラスを出した。

オルロフは、暖炉脇の椅子に座った。
「君は道がわかるか?実は迷って困っていたんだ」
妖精は瓶からとろりとした液体を、グラスに注いだ。

「ああ、そうね。この場所では
魔女の力が、何かの弾みで揺らぐことがあるの。
それで、道が消えたんだわ」
妖精はグラスをオルロフに渡した。

「薬草リキュールよ。うちの秘伝のやつ。飲んで!」

オルロフはやっと妖精の顔を、
ゆっくり見ることができた。

透き通るような肌とアメジストの
瞳は、光の加減で青くも変わる。
金の髪には銀が混じる。
コーラルピンクの小さい唇。

秘密の小箱に入れておきたいような美しさだ。

グスタフの女は髪が黒く、体格もいい。そして無口だ。

この妖精は、まったくそれと異なる。
はかなげに見えるが・・・
「なに・・!人の顔をじろじろ見てんのよっ!」
妖精がかみついた。

「まったく、グスタフの男は
獣と同じって聞いたわ!!」
1年中発情している!!!!」

オルロフは狼狽(ろうばい)
した!
こんなかわいい妖精の口から・・
こんな言葉がでるなんて・・
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