双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
 それは彼との距離が縮まるたびに大きくなっていく。そして私の目の前で足を止め、彼はふわりと笑った。

 彼があまりに優しく微笑むものだから、心臓を鷲掴みされたように苦しくなる。それなのに目を逸らすことができない。
 それはきっと、彼もまた真っ直ぐに私を見つめているからかもしれない。

 胸を高鳴らせながらジッと彼を見つめ返す。

「店長から聞きました。あなたが俺に忘れた本を届けようとしてカフェを出たと」

 先に口を開いた彼の声に我に返り、私も慌てて答えた。

「あ……そうなんです、片づけをしていたらお客様のお忘れ物を見つけまして。追いかければ間に合うと思ったのですが、お戻りになられたのならむやみに探しに行くべきではありませんでしたね、すみません」

 早口で捲し立てて謝ると、彼はクスリと笑った。

「どうしてあなたが謝るんですか? むしろ謝るのは俺のほうです。……わざと忘れていった本にあなたが気づき、追いかけてきてほしい。それをきっかけにあなたとお近づきになれたらと、邪な気持ちでいたのですから」

「えっ?」

 聞き間違い? さっきわざと本を忘れていったとか、私とお近づきになれたらとか言ったよね?

 にわかには信じられなくてジッと見つめていると、彼はほんのり頬を赤らめた。
< 14 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop