双子を身ごもったら、御曹司の独占溺愛が始まりました
『強くなりたいのに』
「どうぞ」

 珈琲を淹れて、そっと彼女のテーブルに置く。

「ありがとうございます」

 そう言っても彼女は一口も珈琲を飲もうとしなかった。
 話があると言われ、悩みながらも彼女を家に招き入れた。それに彼女ともいずれは向かい合わなければいけないはず。

 優星君は母親が一方的に進めた婚約だと言っていたけれど、彼女はそういう認識ではいないのかもしれない。

 ひしひしと敵意を向けられているのを感じながら、目の前に腰かける。気まずくて珈琲を飲んだところで、彼女は口を開いた。

「初めまして、尾上美野里と申します」

「あ、初めまして。立花星奈といいます」

 彼女に倣って自己紹介をしたものの、尾上さんはそれ以降なにも話さない。

 私はただ様子を窺うばかり。でも改めて真正面でこうして見ると、本当に綺麗な人だ。

 艶のある黒のロングヘア、透き通るほど白い肌に切れ長の瞳。美人という言葉がぴったりな人だと思う。

 それに、着ている洋服も身に着けているアクセサリーにバッグもどれも高そう。婚約者だもの、私とは違って彼に見合う家柄の女性なのだろう。

 そんなことを考えながら見つめていたら、突然尾上さんと目が合い慌てて逸らしてしまった。
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