官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 今から三年ちょっと前、東京でフラワーショップの雇われ店長として働いていた私は、閉店を機に故郷であるこの島に帰って来た。

 家族はいない。母は私が生まれてまもなく病気で、父は高校生の時に海の事故で亡くなっている。親類は皆この島を出てしまっていて身寄りと呼べる人もいない。

 母の幼馴染みだった素子さんが、東京で一人で貴斗を産もうとしていた私のことを島に連れ帰ってくれた。

 それからは、素子さんと智雄さん、そして二人の子供で私より二歳年上の(ゆう)ちゃんが本当の家族のように私のことを支えてくれている。

 帰って来たばかりの頃は、つらくて泣いてばかりだった。でもこんな私でも、あの頃よりは強くなったと思う。


「貴斗、お待たせ。帰ろっか」

「あ、ママきた!」

 保育園の砂場で遊んでいた貴斗が、「ママ~」と声を上げて私目がけて走ってくる。

「捕まえた!」

 勢いよくぶつかってきた小さく柔らかな体を、私はギュッと抱きしめた。貴斗のはしゃぐ声が、園庭に響き渡る。そのまま貴斗を抱き上げ、私は担任の先生の元へ向かった。

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