官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
「あ、須崎(すざき)さんこんにちは。貴斗くん、今日も元気よく遊んでましたよ。お昼寝の時に汗かいちゃったのとお砂場遊びで汚れちゃったんで、今日は二回着替えさせてます」

「わ、すみません。ありがとうございます」

 先生から貴斗の着替えが入ったビニール袋と通園鞄を受け取り、頭を下げる。

「ばいばい貴斗くん、また明日ね」

「ん……、ばいばい」

 さっきまではしゃいでいたのに、貴斗はもう眠そうだ。目を擦りながら、先生に力なく手を振っている。

「あら、ママに会って安心したのかな?」

 私にくったりと体を預ける貴斗を見て、先生がくすりと笑う。腕の中の重みと温かさを堪らなく愛しいと感じる。

「それじゃ、失礼します」

 保育園を後にして、島に帰って来た時に購入した中古の軽自動車に貴斗を乗せた。

 疲れきったのか、貴斗はチャイルドシートに乗せても目を覚まさない。無邪気な寝顔が可愛くて、つい笑みが漏れた。と同時に、込み上げてくるものがある。


 貴斗は、彼によく似ている。さらさらの茶色がかった髪も、長い睫毛も、好奇心に満ちた綺麗な瞳も。貴斗に宿る彼の面影は、時折私の心を弱らせる。でも――。

 誰よりも、大切で愛しい貴斗。私はあなたのためならどんなことも乗り越えられる。貴斗を育てていくうちに私は涙を忘れた。……思い出も過去も捨てた。私一人で、貴斗を立派に育ててみせる。

 貴斗の頭をそっと撫で、私は運転席に乗り込んだ。

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