官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました
 それに、私から連絡してないとはいえ、彼の訪問がぱったり途絶えたことも気になっていた。

 あんなに足繁く通っていたのは、なんだったんだろう。考えたくはないけれど、一度寝て、気が済んでしまったのだろうか。

 貴裕さんはそんな人じゃないと否定する気持ちもあるけれど、男の人なんてそんなものなのかもしれないとも思ってしまう。

 こんなにぐじぐじ悩むくらいなら、いっそのこと自分から連絡して、彼女の言ったことが本当なのか問い詰めればいいのかもしれない。でも、私にはそんな勇気もないのだ。

 自ら望んではいけないとわかっていても、私は、貴裕さんの口から決定的な言葉を言われてしまうのが怖かった。


「――店長、店長!」

「あれ、瑞季さん。どうしました?」

「どうしたって、それ以上切っちゃったら、花までなくなっちゃいますよ」

「えっ?」

 手元を見ると、水切りのためにほんの少しく切るつもりだったガーベラの茎が、だいぶ短くなっていた。瑞季さんが声をかけてくれなければ、もっと無残な姿になっていたかもしれない。

「かわいそうなことしちゃった」

 これじゃもう、店には出せない。明日は店休日だから他の咲き終わりの花と一緒にプチブーケを作り、サービス品にしよう。何点か作って、店内のお客様の目につきやすいところに置いておくことにする。

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