13番目の恋人
 年末年始は、実家へ帰った。
 久しぶりの全員集合で誰もが機嫌がいい。私の結婚の話で持ちきりだった。
 
 祖父も、父も上機嫌で「願ってもない相手だ」などと言っていることを思うと、俊くんの言っていた通り“ほぼ決定事項”であることと、祖父や父が、もしくは兄が、何らかのネットワークを使い、お相手を徹底的に調べたのだということが、まんざら嘘でもないのだと思った。
 
 祖母と母は振り袖を出してきて、陰干しだ、なんだとわいわいやっている。
 
「小百合はね、やっぱりこんな藍色が似合うわね」
「お見合いの場で、地味じゃないかしら」
藤子(とうこ)もこっちの色を着たでしょう?」
「藤子は、顔見知りと結婚でしょう? 小百合は初めて会うのよ、第一印象が大事じゃない?」
 
 ……そういえば、パーソナルカラー診断も行ってないな。思い付いたらすぐ行動、か。
 
 年明け早々の休み中に開催しているレッスンに予約を入れた。この一年しか好きな事は出来ないかもしれない。
 
「これなんて、若い子にはハイカラでいいんじゃないの?」
 
 とにかく、私には、赤やピンクの可愛らしいものは、身内から見ても似合わないらしい。
 
 落ち着いた紅掛花色の生地に百合の花が橙色で描かれ縁取りに金色が使われているおかげで、全体的には華やかな印象だ。大正ロマンといったところだろうか。
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