13番目の恋人
「うん、可愛いね。でもこんなモダンな感じでいいのかな?」
「今は着物着る人も少ないからねぇ」
 
 これで決まりかと思いきや、甘かった。
 あーでもない、こうでもないと帯や小物、帯の結びまでも試されて、着せ替え人形状態。

「外で見るとまた雰囲気が変わるから」と、庭先にまで出された。
 そう言えば、着物なんて久しぶりだ。
 
「あ、その帯、私も使ったやつだね」
 姉が懐かしそうに言った。
 
「そうなの? 私にも似合うかなあ……」
「うん、綺麗よ」
「お姉ちゃん、結婚するのって、幸せ?」
「……うん、色々あるけどね、それもぜーんぶひっくるめて、少し幸せが勝つ、くらい」
 
「そうかあ、やっぱり色々あるのかあ。羨ましかったな、お姉ちゃんが結婚する時」
 
 綺麗な、着物で稔くんと並んでた。あれ、顔合わせだったんだな。

 昔は、俊くんと結婚出来るお姉ちゃんが羨ましかったけど、結局お姉ちゃんは稔くんと結婚したし、俊くんも違う人と結婚する。
 
 わからないものだな。私が羨ましいと思っていた相手でも、姉は望まなかった。今の私が、羨ましいと思う頼人さんのお相手の女性は……どんな気持ちなのかな。
 
 せめて、彼女にとって頼人さんとの結婚が望むものならいいな、とそう思った。
 
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