13番目の恋人
 翌朝、常識的な時間に頼人さんは迎えに来てくれた。
 全員に見送られるのは照れ臭いけれど、いつか実家へも頼人さんとただいまって帰る日がくるのかな。
 
「婚約したら、一緒に住んでもいいかなって思ったんだけど……恐らく駄目だと言われるだろうなあ。君の家だと」
「……ん? そうかなあ」
「そうだよ。君のまわりは、(ひど)……厳しいから」
「でも、いずれは一緒に住めるのでしょう」
「うん、楽しみだね。それまでは、徹底的に……」
「徹底的に……?」
「通う!」
「あはは! 私も通う!」
「いいね、また一緒に料理しようね」
 
 料理しようねって、可愛い。
 
「ごめんなさい、私がお料理下手だから」
「うん? いいよ、俺も下手だし。練習する」
「私も」
 
 車の向かう道が違う。
 
「あれ?」
「ひとまず今日は、通ってくれる? その前に寄り道」

 頼人さんは車を停め、待っててと言ってそこの店に入って行った。
 
 N.(エヌポワン)
 戻って来た彼は、そろりそろり歩いてる。
 
「これ、そっと持ってね」
「ケーキ?」
「そう、崩れないようにね、頼むよ」

 と、優しいプレッシャーをかけられて車は走り出した。
 
 彼の家に着くと、
 
「夜にって、思ったけれど、待ちきれない」

 そう言って箱から取り出したのは、サンタの笑うブッシュ・ド・ノエル。
 
 2月の今日に、ブッシュ・ド・ノエルだ。
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