13番目の恋人
「どうしましたか?」
「小百合、子供はどうする?」
 
 そう聞かれて、そこでやっと気がついた。頼人さんが、本当にお父さんになるなら、お母さんは私だということに。
 
「……私、お母さんになるって事でしょうか」
「そうだね。結婚したら……いつかはね」

 さっきの親子みたいになるのかと、私も振り返った。幸せそうな家族のかたちがそこにあった。
 
「わ、考えたことなかった」
 そう言うと
「うん、自然にね。だから、小百合もしたいことがあるならどんどんするといいよ、きっと今のうちかもしれないよ」
 頼人さんは私の気持ちが追い付くまでと言ってくれた。
 
「じゃあね、頼人さん、恋人っぽいことしましょ」
「いいね、じゃあ……」
「家! ベッドへ直行!」
 
「……小百合……あのねえ」
「だって頼人さん、ベッドでは女性扱いでしょ」
「……そう、だね」
 
 苦笑いの頼人さんに体を密着させて腕を組んだ。これくらいで彼がその気になってくれるかはわからないけど、優しく微笑んでくれた。
 
 
「あ、あと……公道も走ってみたい」
 
 と、言った時は……完璧に目が死んでいたけど
 
「うん」と何とか頷いてくれた。
「頼人さん大好き」
 
 子供が出来たら、こんな心配を子供にもしなきゃならないのか……と、頼人さんが言った気がしたけど、どういうことなのかな?
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