13番目の恋人
「だってなあ、俺にとっちゃあ、いつまでも小さな子供のイメージで……もう嫁にいっちゃうのかあって」
「まだよ、“今は楽しむ”んだから!」

そう言うと、俊くんが優しく目を細めた。昔から知ってる、兄のような優しい笑顔。恥ずかしくなって饒舌になる。

「わ、私だってね、恋愛くらいは、好きな人くらいは自分でって思ってて、この一人暮らしの家に恋人を招待する夢とか、そ、それに明日は万里子さんとテーブル買いに行くんだっ! 丸いやつ! 恋人が出来たら買おうと思ってたんだけど、先にテーブル買っちゃうの!」
「テーブル?」
「うん、恋人と二人で使うのにちょうどいいやつ」
「大型家具か。よし、車出そう」
二人で使うテーブルって言ってるのに大型家具とか言い出す俊くんは感覚がrichだ。

「え、ちょっと二人で使うのにちょうどいいサイズだってば! 直径80とか100くらいの。家具屋さん、配送してくれるでしょう?」
「配送? 一人暮らしの部屋に配送か?」
「そうだよ」
だから、一人暮らし用に買うんだってば。俊くんは当たり前の事を聞いてくる。

「お前が一人の部屋に配送業者を入らせるのか?」
「うん、そうなるね」
「ダメだ。男だろ?」
「配送業者さん、そんなのないよ。お仕事だよ。そもそも、そんなに大きくないから玄関までかもしれない」
疑われる配送業者さんが気の毒になってくる。

「玄関でも、鍵を開けるのだろう?」
「はあ、まあ」
「受け取りは、俺が立ち会う」

俊くんは真顔だ。そうだ、そうだった。俊くんは家族(あっち)側の人だった。その事を思い出した。
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