13番目の恋人
「俊くん、大丈夫だよ。ね? そのために一人暮らししたんだからさ」

まだまだ何か言いたそうな俊くんは上を向いて何か考えてる素振りをして、もう一度私を見ると、また何か考える素振りをして

「わかった」
やっと、どこかで決着をつけたらしくそう言った。

ほっとしたのも束の間
「いつ、配送業者が来るのか、来たら連絡、帰れば連絡を俺にするように。事前連絡、リアルタイム、事後連絡。3回、いいな?」
 俊くんが親指と人差し指、中指を使って“3”のポーズを取って厳しい表情で言った。

「はい」
仕事より厳しい。

「心配性だなあ、俊くんは」
恥ずかしいし、いい加減にしてくれって思うのに、少し嬉しい。

「まあね、小百合は特別」

そう言って、私のマンションに到着するとタクシーを待たせ、家の前まで送ってくれる。

俊くんはいつもそう。オートロックの管理人が駐在するセキュリティバッチリのマンション。それでも
「エレベーターの中とか、物陰とか誰か潜んでるかもしれないだろう」
ってことで、いつも送ってくれる。部屋の中に入ることはないけれど。

「明日、本当に車出さなくていいのか?」
「うん、大丈夫! 万里子さんと一緒だし」
「そうか、園田が一緒なら大丈夫か。何かあれば連絡しろ」

俊くんは私がドアをロックするのを確認すると背を向ける。とても心配性だ。いいのかな、あの人。婚約者に怒られないのかな。
< 30 / 219 >

この作品をシェア

pagetop