13番目の恋人
第7話

頼人

裕福な家庭に生まれた俺は、物事ついた時から、両親からも祖父母からも恋人を作ることにいい顔はされなかった。

それでも若いうちはと大目に見てくれていたのかもしれない。うちの両親はそんなに厳しい方ではなかった。だが、結婚だけは頑なに、俺の好きにさせる気は無かった。

それが理不尽なものではないと、頭ではわかっているつもりだった。両親の気持ちも、わかっているつもりだった。

父親は一度、結婚を失敗をしていた。祖父母の反対を押しきって結婚した女性とはわずか数ヶ月で駄目になったと聞いた。駆け落ちする勢いの父親に祖父母は仕方なく結婚を許した。それなのに、その結果だ。

父親は『若気の至り』だと。その女性に夢中になって何も見えていなかった、そう言った。祖父母の意見を聞くべきだったと。

その後、見合いした母と再婚し、今は幸せに過ごしている。それ故に俺に自分の二の舞を演じて欲しくないのだろう。母と結婚してからも母は父の過去にいい思いはしていなかったらしい。それが母親から見て取れた。

 頭ではわかっているつもりでも……結婚相手まで親に決められるのかと複雑な想いを抱えていた。ちょうど、そろそろ結婚を考えてもいい頃だと両親から打診された時に出会った女性がいた。
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