狂犬に愛される覚悟
狂犬の独占
仕事が終わり帰ろうとしていると、
「鈴野さん!」
「え?佐崎さん?」
「良かった!間に合った!」
「……??」
「一時間位でいいから、残業お願いできないかな?
山崎さんが、ちょっと遅れるみたいで……」
「そうなんですね。わかりました!」
「助かった…じゃあ、よろしくね!」

愛妃は一度、従業員出入口に向かった。
「愛妃!お疲れ様~」
「あ、零王!今日、残業になったの。
一時間位なんだけど…だから、先に帰っててくれる?」
「えーー!やだー」
「ごめんね…でも、ワガママ言わないで?」
「じゃあ、キスして?」
「え?ここで?」
「うん、ここで」
「後から、家に帰ってからしよ?」
「やだ!今、ここで!
ほら!俺の口唇、ここ!」
口唇を指でトントンと叩く、零王。

愛妃は左右を確認して、零王の口唇に軽くチュッとキスした。
「えーもっと、して?」
「お願い////もう…許して?」
今にも泣きそうな、愛妃。

「あ、ごめんね!わかったから、仕事してきていいよ!ここで、待ってるから!」
「うん」
中に入っていく愛妃だった。
それを見送る、零王。

「ヤバ…ちょっと、やりすぎたかな…
でも……めっちゃ可愛いんだけど……!」
零王は申し訳ないと思いながらも、目を潤ませた愛妃に対しゾクッと気持ちが昂っていた。

「ほんと、やりすぎだな…大人げねぇ……」
「あ?
お前……」
「昨日の電話の相手。
佐崎って言います」
「盗み見?趣味悪っ…!」

「鈴野さんがあまりにも遅いから、様子見に来たんだよ。
てか……どの辺が、犬(笑)?」
「はぁ?」
零王を見て、クスクス笑う佐崎。
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