魔女は今日も、忙しく恋する!
「歩いてまで俺のところに来たの?ローゼは俺のことしか見えないくらいなんだ?」

「…そうよ…」

 穏やかに笑うインキュバスを前に、魔女は魔法が使えなくなっている自分を情けなく思い下を向く。

(バレたくなかったのに…)

「そんなに俺を想ってくれているし、俺が君を抱いてあげようか?そうすれば君に魔力を分けてあげられるし、恋人は無理だけどたまに可愛がってあげるよ」

 インキュバスは全く悪気も感じられない様子で、また穏やかに笑う。

「い、嫌よ…!私、あなたが本当に好きなの…!!私だけじゃなきゃ嫌…!!私はあなたの魔力が目当てなんじゃないわ!」

 魔女は真剣に言った。

「本当に俺に一途なんだね。…かわいそうに、気づいてもらえないなんて…」

 インキュバスはそう言った。

「??」


 その日帰ると、コウモリは城にはいなかった。

「コウモリは??あなた知らない??」

 城の庭でケロケロ鳴き続けるカエルに聞いた。

「申シ訳アリマセンろーぜ、私ハ気ヅキマセンデシタ…」

「あなた、どうかしたの??ずっと鳴いて」

「…歌ヲ練習シテイルノデス…。私ノ声ガ気ニイラナイト、言ワレテシマイマシタノデ…」

 悲しげにカエルは言った。

「あぁ、ヘビに?…あなた、まさか…」

「アァ、ドウカ、彼女ニハ言ワナイデ…!彼女ノ気ニ入ルヨウナ、せれなーでヲ歌エルヨウニナルマデハ…!!」

「…。分かったわ、言わない…!」

 いつもケンカをしている相手だが、ヘビに嫌われないようにと懸命に歌を練習するカエルを見て、魔女はなんとも言えない気持ちになった。

(カエルったら…。彼の気持ちがヘビに届けばいいけど…)

「…ろーぜ、ドウカ、アナタモ気ヅキマスヨウニ…」

「え?」

カエルはそうつぶやき、また歌を歌い出した。
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