レインコートもいいけど、傘は必要
6.天の川で織り姫と彦星が出会う日に・・・


 雨の日の放課後。


 梅雨時期の通学路は、傘を持ちながら歩く人が目につく。

 ほとんどの生徒はすでに帰宅して、校舎の中は静まりかえっていた。


 要領の悪い星野は、今朝の遅刻の理由がサボリと担任教師に判断されてしまい、職員室で反省文を書かされてる。

 教師に反省文を提出した星野は、憂鬱な気持ちで教室に戻っていく。

 クラスメイトは帰宅する時間帯、人影は無いと予想する。



 薄暗い廊下を歩き進み、教室の扉を開けた。

 予想を裏切って、窓際の席に誰かが座ってる。


 視線を向けると、明るい表情で机に頬杖をつき、雨曇の空を見つめる……

 姫井 渚の姿があった。



「星野くん、おつかれさま」


「えっ、姫井さん!僕を待っててくれたの?」



 姫井は、星野と視線を合わせないまま噛み合わない会話を始める。



「雨、やまないわね……」


「梅雨の季節ってこんなもんだよ、だから帰らない?」


「そうね……」



 姫井は席を立ち、帰り支度を素早く終わらせ教室を出ようとしていた。

 星野も愛用の大きな高級傘を手に持ち、ロッカーの中から折りたたみ傘を急いで取り出し振り返る。




 でも、教室に姫井の姿はなかった……






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