新人メイドと引きこもり令嬢 ―2つの姿で過ごす、2つの物語―
《2 裏》
 夜も更け、娘がやっと眠りについた頃。部屋の物音ですぐに目が覚めた。

(え、なに…?)

 部屋を見渡すと、部屋の隅に誰かが姿を現す。

「誰!?…いえ…どなたですか…!?」

「…主人のもとに来た令嬢を拝みにな…」

 薄暗い部屋の中、声を聞く限りでは若い男で、そのままこちらにゆっくりと近づいてくる。

「…令嬢のくせに…。男が夜、部屋に入ってきたんだ。叫び声はどうした?」

 驚きのあまり、自分は叫び声を出すことを忘れていたらしい。

「あ…。あ、あの…そんな事より…あなたはどなたですか!?なんでこんな時間に??どうやって…」

 近づいてきた男は片目に眼帯をし、屋敷内で働くには似つかわしく無い、ラフな姿の若い男だった。

「…俺はここで働いている者だ…お前がどんな女なのか確かめにきた…見せてみろ…!!」

 男は早足で近づき、あっという間にベッドにいる娘に覆い被さった。

「嫌…!!」

「大人しそうな生娘に見える…どうせ世間知らずの令嬢だ…!」

 押さえつけられ服を解かれ始めた。

「や…止めてくださいっ…こんなこと…!!」

「主人以外いないこの時間の屋敷だ、忌々しい金持ちの令嬢を隅々まで調べる…誰も見ていない…訴えても出てくるのはその娘の“狂言”だけだ…!」

「…あなたも『お嬢様』を…」

「馬鹿な娘だ…さっさと逃げ出すんだったなあ…?さあ、どうだ…」
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