君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
9、ゆっくりと一歩ずつ



 コートを着込み、温かく着飾った人達が賑やかな街を多く行き交う。

 光の鏤められた十二月の街は、至る所に赤や緑、ゴールドの装飾が施されている。

 となりを歩く公宏さんは、両手をステンカラーコートのポケットに突っ込み、頭上のイルミネーションを見上げていた。

 クリスマスイヴイヴの、十二月二十三日。

 今日は夕方から待ち合わせをして、公宏さんと少し早いクリスマスデートに出かけている。

 イルミネーションを見て、これからクリスマスディナーに行く予定だ。

 園の前で倒れ病院に搬送された後、私はずっと無くしていた記憶を取り戻した。

 何を失っていたのかわからず、ずっともやもやしていた。

 でも、取り戻してから不思議に思っていたことは次々と繋がっていった。

 公宏さんと私が、まだお付き合いも結婚もする前の、ドクターと患者という関係だったときのこと。

 公宏さんは私に言っていた。


『忘れてしまってもいい記憶だってある』


 男性恐怖症だった私がその記憶を失っていると接して気付いた公宏さんは、だからあのとき私にそう言ったのだ。

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