姫と魔王の城
覚悟
魔王は鳥籠を開け姫を出すと、身体を光の鎖で縛り上げ、そのまま床の絨毯に組敷いた。

「いやあああ!!」

「うるさい!!あの娘と似た姿と声で、お前が喚くのを聞くだけで虫唾が走る!」

「ん〜!!」

姫は口を濃い霧で塞がれ、抵抗も出来ぬまま転がされていた。

「……。」

魔王は目をつむり、黙ったまま動かなくなった。


「ミグー、兵士長ニ呼バレタ、一緒ニ来イ…」

「料理長!」

地下牢の二人の元に来たのは料理長だった。

「戦ハ俺、シタクナイ…ダガ、準備ダソウダ…。モウスグ人間ドモガ来ル…」

「あ……」

「…おいら、行きたくない…!姫といる!!戦争は嫌だあ!!」

小鬼は娘に抱きつき、また泣き出した。

「俺モ……。魔王様ダッテ、戦イハオ嫌イダ…。…ダガ魔王様ガ言ッテイタ…仲間ヲコレ以上傷ツケナイ為、ト…。ソレニ…ヤラナケレバ人間ドモニ、姫ヲ取リ返サレテシマウ…」

「おいら姫にいてほしい!!魔王さまが大好き!でも…姫だって好きなんだ!!みんなにダメだって言われても、おいら姫が大好き!!」

「俺ダッテ、俺ノ料理ヲ、ウマソウニ食ベテクレル姫ガ、ズットイテクレタラト…。」

「ふたりとも……ありがとう…。」

「サ、ミグー、イクゾ…。マダ始マルワケジャナイ、準備ナダケダ…。」

小鬼は娘にもう一度抱きつくと、名残惜しそうにしながら、先に行った料理長のあとを、とぼとぼと追いかけて行った。

(まだ料理長も知らないのね、私が本物じゃないって…。戦争……私に優しくしてくれた魔物たちと人間の…。弟のように可愛いミグー…ミグーも私を好きでいてくれる…。色々私のために一生懸命食事を作ってくれる料理長も…。やっぱり、戦争なんて嫌…!!)
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