姫と魔王の城
娘は牢の中で一人で考えていた。

(きっと今頃、願いのために魔王は姫様を……。魔王だって、何か強い想いがあって姫様の魔力を欲しがったんだわ…。あの方は仲間を大切に思っている。戦争を今までしなかったのも仲間の為…。役に立ちたい…!私は用済みかもしれない…でも、あの方が本当に仲間を思っているなら…私にできることは……)


しばらくして、細身で兵士のような姿の魔物が階段上から下りてきた。

「姫…俺が見張らせてもらうぞ。心配するな、鍵がないからといって、暴れなければ近づかない。人間は嫌いだ。」

「は、はい…!」

やってきたのは先ほど姫を魔王の前へ連れてきた魔物だった。

「…あれはうるさい人間だった…。お前のほうがマシだ。ミグーもバレないと思っているようだが、お前には懐いているようだしな…。」

魔物は本当に疲れたようにため息を付いて言う。

「あの…ミグーは…?まだ帰らないのですか…?」

「はあ、ミグーもならお前もか…全く…。ミグーは魔王様からまだ命令が下らないから戦争の準備待機だ。…あの娘は待望の娘だというが、魔王様は何を考えておられるのか…。」

「え…??」
(あの方は知っているはずなのに、今連れてきたのが本物の姫だと周りに言わなかったの…?)

「あと、あの娘を心配しているのだろうが、どうするのかは魔王様のお考え次第だ。俺は知らない。」

娘はいま頼まなければと思い、魔物に言った。

「…お願いがあるんです!魔王に会わせてください!」

魔物は娘の言葉に面食らった。

「…あのな!俺は魔王様の命令で、お前の見張りに来たんだ。魔王様は、あの小煩い娘の尋問中だ!」

娘はなおも必死に言った。

「お願いです!!魔物も人間も傷ついてほしくないんです!…もし私が変なことをしようとしていたら、私の手を切り落としても構いません…!急がないとみんな……」

なんとか冷静に返事を返していた魔物も、それを聞いて流石に狼狽えた。そして、諦めたようにため息を付いた。

「…仕方が無い…そこまでいうのなら魔王様に…。お急ぎの手を止めるのだから、お怒りを覚悟しておくんだな…」

「はい!」


魔物はなんとか娘の足の鎖を外すと、玉座の部屋の大扉の前まで娘を連れてきた。

「…どうなっていても知らないぞ。しばらく物音がしないそうだ。」

「…!」

(そうだ…魔王は姫様と……。それが魔王の願いである、魔力を得る方法だったんだもの…)

「魔王様!急ぎの進言をさせて頂きたく参りました!どうか!!……中から魔力が感じられないな…失礼致します!!」
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