姫と魔王の城
中に入ると、姫は敷かれた絨毯の上でぐったりと眠っており、魔王は玉座に座り、うなだれていた。

「…あぁ…お前か……連れて来たのか…?」

魔王は魔物の後ろにいた娘をチラリと見て、決まり悪そうにして言った。

「…恐れながら……この娘でも…魔力の法を吐かなかったのですか……?」

魔物の言葉に魔王は何も答えず、いつもの気品を取り戻して言った。

「…。何か話があると言ったな…聞こう…。お前は下がっていろ。」

「…!」

魔王が魔物にそう命ずると、言われた彼は心配そうに顔を上げた。

「心配するな。危険なこちらの床の『娘』は籠へ入れておく。」

「…はい、では…」

魔物は大扉を出て行き、姫は魔王によって鳥籠に入れられると、娘は跪き頭を下げたまま言った。

「まずは謝らせて下さい…。ごめんなさい…私は一生懸命だった貴方を騙し、自身を姫だと偽りました…。そして貴方を罵り、あなたの持つ希望まで……」

娘の言葉に魔王は少し穏やかに笑う。

「なぜお前が謝る…?それにやはり、お前は演技が下手なようだな。あれであの姫の代わりなどと…。…なぜ謝ろうと思った?お前が謝っても、私は魔力を得ることを諦めていない。」

娘はじっと、魔王の目を見つめて言った。

「…貴方が、部下…仲間をとても思いやる方だとわかったからです。貴方ならきっと、誰かを不幸にする為に力を欲しがったりはしないと。無抵抗な仲間を殺されて……あっ!」

「ミグーから聞いたのだろう?そうだ。人間の王は、魔物を見つけると排除するよう命令を下したそうだ。」

そう話す魔王の顔は、やはり少し悲しげだった。娘は懸命に続けた。

「そんな国を相手に貴方は、その国の姫を連れてきて魔力を……。そこまでのリスクを負ってまで貴方が魔力を欲しがったのは、仲間のためではないのですか?今までそこまでされて抵抗をしなかったのも、全て…」

「…優しさだけでなく、察しもいいか…。それで、私に話したいことというのは?詫びとお前の推測を聞かせるだけのために、奴に鎖を解かせてまで来たのではないのだろう?」
< 14 / 19 >

この作品をシェア

pagetop