姫と魔王の城
その夜、娘は魔王に呼ばれた。

「ミグー許せ、『姫』に話したい事があるのだ。」

まだ姫と一緒にいたい、と拗ねる小鬼をなだめ、娘は魔王の部屋へやってきた。

「魔王さま……」

「…お前の勇気は皆の幸せに繋がった…まずは礼を言う…。怒りに我を忘れ、魔力を得る前にあのまま、皆人間たちに滅ぼされていただろう…。」

「いいえ、貴方の優しさがみんなを救ったのです。ミグーの気持ちも考えて下さって…」

娘は跪いて言った。

「……許して下さい…私は貴方にまた謝らなければ…姫様の魔力を使ってほしくなかったのは、貴方を心配しただけでは無いのです…」

「なんだ?」

「…貴方が…私以外の方と身体を…そう考えたら悲しくなって……だから姫様と二人の力を、使ってほしくなかったのです…」

「そうか…愛らしいことを言う…立ち上がり顔を上げよ。」

魔王は少し笑って娘の手を取った。

「なぜ…なのですか…?あれだけ魔力を欲していたのに…」

「…私は確かに躊躇った……私も…お前の事を思っていたからだろう…そして、お前と同じことを考えた……」

「え……」

「…お前以外の者を…抱きたくはなかった…。…だが、お前の悲しそうな顔が思い出された…。私が憎かっただろう…?知らぬとはいえ、お前を酷く傷付けたのだから…。姫では無いかもしれないと思っていたのに、それでも私は…。お前を早く手放してやるのだった…」

娘は魔王の気遣いを想い、涙を零した。

「許してください、魔力も無く役に立たない私を、連れて行って欲しいなんて……」

「言わなかったか?お前に興味があると…。お前が本物の姫でなくとも、ミグーや他の者にとって、お前は必要だ…。私も…お前に感謝している…。それに…」

魔王は娘を優しく抱きしめ、寝床に組敷いた。

「私が差し伸べた手を、お前は取ったのだ。私が手離すとでも思ったか…?」

「私…ほんとに……」

「嫌だと言っても離さぬ…。愛している…。居ろ、ずっとここに…私のもとにな……」

「はい…お慕いしています…私も貴方を…!」

二人は身体を寄せ合った。今までと違い、幸せだけを感じ、心も通じ合わせた。

(幸せ…。もっとこの方を知りたい…みんなのために頑張るこの方を助けたい…!)
< 18 / 19 >

この作品をシェア

pagetop