姫と魔王の城
朝、魔王は優しく娘を撫で、起こした。

「お前…そろそろ起きておくれ…。身体は大丈夫か…?」

娘は目を覚ますと、恥ずかしそうに下を向いた。

「おはようございます…はい、お気遣いありがとうございます…。私のほうが遅く起きてしまって…」

「気にするな…私が無理をさせたのだ。だが、そろそろお前が起きねば、ミグーに泣かれてしまうからな。」

魔王は愛おしそうに娘を抱きしめた。娘は微笑んで魔王に身体をそっと寄せる。

「はい…。私、幸せです…こんなに穏やかに過ごせるなんて…」

「…我が願いだ……お前にならもう話しても良いだろう。私の願いは、魔物と見れば傷つけようとする人間共と世界を分かち、仲間皆が傷つかず済む世界を創る…そして人間達とは二度と干渉をしないことだった。だがお前を知ってからは、その願いと共に、お前の全てを手に入れたいと思っていた…」

魔王は娘を抱きしめたまま言った。

「私はお前の名も知らぬ。だがお前を全て知りたい…こんな気持ちになったのは初めてだ。お前は優しい娘だ…。ミグーに手当し、料理長に感謝し、私をも気にかけてくれた…。お前の、いつかは人間と共にとの願いも、私は考えもしなかった……『姫』、私と共に生きてくれるか…?お前の願いを叶えたい…。」

「はい…!私も貴方のことをもっと知りたい…貴方のそばで力になって生きていきたいです…!!」

「お前『らしく』生きよ…!…魔力で見ていても、お前の気持ちまではわからぬからな。」

娘は嬉しそうに、幸せそうに、魔王のそばで笑った。
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