魔族の王子の進む道
王子の命で首輪と鎖を付けられ、娘は薄暗い部屋に連れて行かれた。
あとから来た王子が指をかざすと、あっという間に娘の首の長い鎖は壁に繋がる。

「…すごい魔力…!王子様はすごいなぁ…!!」

このあとの自分の心配など露ほどもしていないのか、本当に感心したように娘は言った。

「…奴と同じか……。このヘラヘラとした笑い…不愉快だ…!」

心に感じる何かの引っ掛かりに苛つき、二人きりになった部屋で、壁に繋がれた娘を見やりながら言った。

「『相手』として来たと言ったな?」

「はいっ!王子様の『おあいて』、しまぁす!だって、弟王子様、いなくなって悲しかったでしょ…?あたしだって、ログ坊やガミーがいなくなったら、悲しいですから…!」

苛ついている彼は一番気にしていることを口にされ、思わず娘を睨みつけた。しかし娘は気にする様子もなく、真面目な顔で彼を眺めている。

「…全く…よりにもよって、かなり程度の低い小角族とは…。まあいい、奴が居なくなった憂さを晴らしてやる…!痛めつけ泣かせてやれば…」

彼の赤い瞳が鋭く光った。
娘の身体が光に包まれると、身体が温まり、清められた感じになった。

「わあっ…水浴びもしてないのに…!」

「誰が低魔族の、薄汚れた身体になど触れるものか…!浄化しなくては触れる訳が無い!」

「洗ってくれてありがとうございますっ、王子様!」

娘は満面の笑みに変わった。

「…馬鹿め……」

彼はその呑気さに溜息を付いた。


「うっ…ううっ……」

彼は娘の顎を掴み上げ、見下すように眺める。

「全く、まるで品の無い…。…なんだこの目は。…そのような目で私を見るな…!!」

そう言うと娘の顔を、振り払うように離した。

「っ…びっくりした〜…。ごめんなさい、あたし、王子様はすごいな〜って思って!とてもキレイなお顔だし、魔力は強いし、優しいし!!」

思わず娘を睨みつけた。

「低俗の癖に、私に取り入ろうと言うのか!?」

凄んでそう言ったが、娘はなんの事か全く分からないというようにキョトンとしている。
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