魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)
<狩猟の館・リードの部屋・22時45分>

「これを見なさい」

イーディス先生は、右腕のシャツの袖をめくり、上げた。
腕には大きなオオカミの歯形が・・赤く刻印のように残っている。

「君の真実の力の証明だ。
レジア家のオオカミの紋章だ。
君はグリセラを守ろうとした・・」

リードの目から、涙があふれて止まらない。
愛おしいグリセラ・・
もう会う事すらかなわないのか・・

「もうひとつ言っておかねばならない事がある。」
イーディス先生は顔をしかめた。

「君に魔女の呪いがかかった」
「え・・?呪いって・・?」

先生は上着のポケットから、
小さな香水瓶を取り出した。

「これを君にあげよう。持っていなさい。この先必要になるから」
リードは不思議そうに香水瓶を見た。

「これは魔女の媚薬だ。・・
君はこの香りがないと、男として発情できない・・
これが魔女の呪いだ。」

リードは狼狽(ろうばい)し、
体を強張らせた。

「もちろん、グリセラは意図してやったわけではないが、
君を愛してしまったから・・
グリセラも魔女なのでね」

イーディス先生は、いたずらをする子供のように笑った。

「どうですか?試してみますか?」
先生は身をひるがえして、寝ているリードの上に馬乗りになった。

そして、
リードの首筋に香水を一滴たらした。
あの、甘く切ない香りが深く体内に入る。
脱力と高揚感、体の芯が熱くなるような感覚・・・

イーディス先生は屈むと、リードの肩を押さえ込んだ。

そして、ゆっくりと唇を重ねた。
舌が執拗に絡む。
まるで味わうように、先生は楽しんでいるように見えた。

リードはなされるがままで・・
力が抜けてしまい、抵抗ができない。

イーディス先生は、やっと唇を離した。
そして、リードのぐったりして
赤くなった顔をしげしげと見ると、

「ふーん、わかりました。
なるほどね」
先生はベッドから降りた。

「君はネズの木の実の味がする。
君自身が、魔女を惹きつけてしまう媚薬なんだ」

リードには先生の声が、遠くで聞こえているような気がした。

「グスタフ皇国の皇族は
ネズの木の実の味・・
薬草リキュールには、これがかかせないからな。
魔女の大好物だ・・」

ボーン、ボーン・・
柱時計が時刻を告げた。

「そろそろ行かなくては・・
最後にリード、君の記憶、
そしてここにいた者たちの記憶を消す。
最初から私とグリセラはいなかった・・いいね

君は竜巻に巻き込まれそうになり、落馬した・・それだけだ」

リードは強い眠気で、ほとんど意識がない状態だった。

イーディス先生は闇に消えた。











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