あなたのためには泣きません
「片想いっていうより、一人芝居だよな。」

退屈そうに言う佐川さんの言葉が胸に痛くささる。
そりゃ、佐川さんみたいな人からしたら、お話にならないほど幼稚な内容なんだろうけど、私にとっては、大切な気持ちだったのに。

「黙ってて、相手に差し出してもらおうなんて、無理な話だろ。ちゃんと、欲しいもの欲しいって言えよ。」

コンビニの扉が開くたびに、店内アナウンスのやけに明るい声が聞こえてくる。

「会えるだけでも、幸せだったんです」

やっと絞り出した言葉は、

「じゃあ、泣くなよ。お前がアクションおこしてりゃ、手に入ったかもしれないだろ」

と、打ち消された。

砕かれた心の痛みにに、思わず大きな声がでる。

「佐川さんに、何がわかるんですか。私が、どんなに山中さんが好きで、一緒に仕事できるのが幸せで、一生懸命だったか!佐川さんにわかるんですか!」

そして、言葉は、またあふれ出した涙と一緒になって、止まらない。

「佐川さんにとっては、恋愛なんて、ものみたいなのかもしれないけど、私にはそんな風に思えません。場当たり的ないい加減な付き合いと、一緒にしないでください!」

そう言うと、私はコンビニの横にある住居用階段を駆け上がった。

「おい!滝沢!」
後ろから呼び止める声に振り替えると、

「靴のセンスいいじゃん」

と、からかうような、いじわるそうな笑顔で佐川さんが言った。
私は何も答えず、ヒール音を響かせて階段を上がり続けた。

後から思えば、送ってもらったお礼も言ってないことに気づいたけれど、それを申し訳なく思えないほどに私は傷ついていた。

佐川さんの言葉に自分の弱さを言い当てられて。

くやしくて。悲しくて。

その夜、私はバスタブにお湯を目いっぱいはり、頭まで沈みこんで、ひたすら泣いた。
お湯を出し続け、自分の悲しみがお湯とともに流れ出るのを祈った。

私の恋は終わった。
どこにも行き場のないままに。私の胸の中だけで、砕けた。

「欲しいもの欲しいって言えよ」

湯舟にもぐる私の頭の中に、佐川さんの言葉がよみがえる。

よかったんだろうか。言って。欲しがって。
いつがその時だったんだろう。
なくしてしたまったその時は、いつだったんだろう。
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