浮気 × 浮気


それに気づいた陸は、私に「ん?」と小さく声を発したけれど、私は何でもないと首を横に振った。


陸は今日の朝からずっと様子がおかしい。まるでいつもの陸じゃないみたい。なにか焦っているような、思い詰めているような…さっきからずっと余裕のない表情をしている。

……特に、雪に向ける視線がとてつもなく重くて鋭い。それに、雪と陸の間に流れている空気は何だか妙にも感じられる。


そんな時、不意にあの日の陸の言葉が脳裏を過った。


〝「明里、ごめん、俺…じつはあの日、」〟


一瞬、嫌な予感が胸中をザワつかせた。

もしかしてあの日、雪と何かあった……?


そこまで考えた時、私は咄嗟に自分の考えを否定した。

雪と陸が出会うような接点もなければ、機会だってない。そればかりか、どこにも繋がりはないじゃない。

それに雪は私の親友で、そんな非道徳な事をするような人ではない。

それは私が1番よく知ってる事じゃない。
何を疑っているんだろ、私。


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