浮気 × 浮気

遠い心


❁❀✿✾


「木嶋さん、これ分かる?」

「はい」

「そっ、か」


あの日からもう2日も経ったのに、木嶋さんはずっと冷たいまま。

何を話しかけても、「はい」か「いいえ」でしか答えない。

前までは何があってもあんなに能天気に話しかけてきたのに。笑いかけてきたくせに。

急に距離置くじゃない。


何だか無性にムカついてきて、椅子を蹴り飛ばしてやろうか思ったけど、それは一応やめておいた。


その代わり、じっと木嶋さんの横顔を眺めていれば、私の視線に耐えきれなくなったのか、不意にこちらを向いた木嶋さんと目が合った。

が……しかしその直後、不機嫌そうに視線を逸らされる。


すごい怒ってる…。
私はそう思い、バレないように小さくため息をついた。


口をきいてくれないならしょうがない。それならもうあの手を使おう。

そう思った私は引き出しから付箋を取り出すと、〝ごめんなさい〟と書き込んだ。

そして木嶋さんが使っているパソコンの淵にソっと貼り付けると、文字を打ち込んでいた木嶋さんの手が止まった。

けれど、動きが止まったのはほんの数秒だけでその後は何も無かったかのようにして、また文字を打ち始めた。

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