ねえ、気づいてよ……
『ほんとごめん、涼音の誕生日に』


「ううん。いいの」


『絶対に別の日に祝うから』


「うん。わざわざありがと」


誕生日、一緒に過ごしたかったなぁ。


ちょっとだけ、残念に思いながらも愛香さんの元へ戻る。


「涼音ちゃん、もうひとつのお話、やっぱり今度話すわ」


「え......」


「涼音ちゃん、すごく悲しそうな顔してる。それに、急用ができちゃって」


私、そんな顔してるかな......?


「じゃあ、出ましょ?」


「あ、はい」


お会計まで行くと、愛香さんが私の分まで出してくれた。


「じゃあね」


そう言って去ろうとする愛香さんに、自分の分のお金を渡す。


「歳上なんだし、奢らせて?」


「ダメです。ライバルに、借りなんて作れませんから」


ちょっと、意地悪だったかな。
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