離してよ、牙城くん。
七々ちゃんとは正直、いまは仲が浅いけれど、実の姉だ。
彼女に何かあったのなら、お母さんがここにいない代わりに、義務的に聞かなければならない。
反応を示したわたしに、景野さんは神妙にうなずいた。
「ナナさんが……、大怪我をして、いま手術中なんだ」
……え?
いま、なんて……?
「七々ちゃんが……大怪我?」
子供のころから病気にもケンカにも強くて、いつも弱っていたわたしと違かった七々ちゃんが?
危ないこと、したってこと?
…………入院するほどの、大怪我?
……そんなの、ありえない。
何度も自覚しているけれど、わたしは、……七々ちゃんがすごく苦手だ。
わたしよりも世界を知り、双子なのに、わたしを置いていく七々ちゃん。
夜の世界に踏み入れた理由すら知らない。
それなのに、わたしが心配する必要は……きっとない。