離してよ、牙城くん。



あー……、あいつな。



ぼやんと思い浮かんだのは、うさんくさい笑みを浮かべる黒髪の男。


俺を敵対視しているらしく、なにかとケンカをふっかけてくる粘着質な奴。




あいつに捕まったら、くっそ面倒だ。





「……なんか心配になってきたし、明日から俺が送り迎えするわ」


「おうよ。橘さんも美耶と仲良いならそのへんの事情もわかるだろ」





……どうだかね。

恋すると、盲目って言うし。



百々ちゃんにずっと恋してる俺が言えないなって、自分でちょっと笑いそうになった。





「メッセージくらい、入れとこ」




百々ちゃんは、割と返信が早いほうだ。


メッセージのやり取りはあまりしたことないけれど、律儀なのかすぐに返ってくる。










< 242 / 381 >

この作品をシェア

pagetop