離してよ、牙城くん。
あー……、あいつな。
ぼやんと思い浮かんだのは、うさんくさい笑みを浮かべる黒髪の男。
俺を敵対視しているらしく、なにかとケンカをふっかけてくる粘着質な奴。
あいつに捕まったら、くっそ面倒だ。
「……なんか心配になってきたし、明日から俺が送り迎えするわ」
「おうよ。橘さんも美耶と仲良いならそのへんの事情もわかるだろ」
……どうだかね。
恋すると、盲目って言うし。
百々ちゃんにずっと恋してる俺が言えないなって、自分でちょっと笑いそうになった。
「メッセージくらい、入れとこ」
百々ちゃんは、割と返信が早いほうだ。
メッセージのやり取りはあまりしたことないけれど、律儀なのかすぐに返ってくる。