わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

10. 橘部長を守りたいのです

 最上階ロイヤルスイートは、百平米はありそうで、八人掛けのダイニングテーブルにはフルーツや飲み物が置いてあった。洗練され過ぎて変な形のソファを見て「これはなんのためにあるんだろう……」とぼんやりしてると、宮燈さんが私の肩に手を置いた。

「桜、ここで聞いたことを口外しないと約束して欲しい」
「わかりました。必要なら契約でもなんでもします!」

 私が食い気味に言ったから、森羅さんは「信用します」と言って少し笑っていた。イケメンにつられて返事をしたわけではない、決して。

 テレビの前のソファではなくダイニングテーブルに三人で座ると、まるで会議。「念のため、録音します」と言って森羅さんが自分のスマートフォンをテーブルに置く。少し俯いた顔は宮燈さんに似てるなと思った。

 ……しまった、美形と美形が向かい合っている……。私は(眼福すぎて話が頭に入ってこないかも)と思ったので、とりあえずテーブルに飾られた花を見ておくことにした。
 花も美しい。この空間で、仮に美に序列をつけるとしたら、間違いなく私が最下位だ。


「結論から言います。僕がお二人を呼んだ理由は姉と話をして欲しいからです」
「話にならない、と何度も伝えたはずだが……」

 宮燈さんは、表情はほとんど変えなかったけど、あからさまに嫌そうな声でそう言った。

「……やっぱりそうですよね」

 森羅さんは綺麗な顔で笑ってるけど、私にはなんだか面白がっているようにも見える。立場的には仲介役なんだろうと判断したので、思い切って私は言った。

「順を追って説明してもらえませんか?」
「そうですね、そのためにも僕はわざわざ来たんだし……発端は、十一月に僕の父が余命三ヶ月だと宣告された事でした」
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