わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

 私が入社の手続きをしたその日の夜、帰宅した夫から「異動する」と告げられた。

「あはは、内定者に手を出したのがバレて左遷ですか?」

 私が笑ってそう言うと、相変わらずの無表情で宮燈さんが答えてくれた。

「身を固めるなら邁進しろと父に言われた。一般的に言えば昇進した」
「そーですか、よかった。おめでとうございます~! さすが私の旦那様」

 そう言って私が笑うと、宮燈さんは「忙しくなるかもしれない。でも休日は確保するから」と少し笑いながら言ってくれた。え、好きー!!


 私がお夕飯を温めなおして食卓に並べていると、バスルームから戻ってきた宮燈さんが咎めるような声で言った。

「……桜、リビングに物を放置するなと何度も言ったはずだ」

 リビングを見ると、確かにソファの上に私が脱いだジャケットとスカートとストッキングが置きっぱなしになっている。

「帰宅後に脱ぎ散らかしていたようだが?」

 図星だったので、何も言えなかった。宮燈さんの無表情のお小言が始まる。リビングは共有スペースである事、洗濯物はすぐに洗面所へ持って行って欲しいと言う事、ソファに物が置いてある状態は好きではない事。

 私が「いま片付けようと思ってましたー」と下手な言い訳をすると、無表情の宮燈さんが冷ややかに言った。

「今? 本当に?」

 ヤバイ、怒らせた。
 完全に自分が悪かったので、慌てて「ごめんなさい」と謝ったけど、宮燈さんは無表情のまま近づいてくる。後退りしたら背に冷蔵庫があたって、宮燈さんが手をついて逃げられなくなった。(れ、冷蔵庫ドンだあ~)と考えていたら、宮燈さんの指が頬に触れる。

「君はやっぱりお仕置きされたくて、わざと約束(ルール)を破っているのか?」
「違います! ついうっかり……」

「次からは君の物が放置してあったら私がもらうことにする」
「ド変態っ! ストーカー!! 片付けますからっ……ん!」

 無理矢理キスされて、私の舌に宮燈さんの舌が絡まって息が出来なくなる。息継ぎしたら、さらに深くキスされて唾液が混ざり合う。
 私を見下ろしてる夫は、少し嗜虐的な表情に変わっていて、頭がぼんやりしていた私はその視線に欲情した。抱き寄せられてるから触れ合ってる体温が気持ちいい。遠慮なく胸や腰を撫でられて体が熱くなる。

「……や、もう……ごめんなさい……あの……」
「何?」
「えっちな気分になりました」
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