強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
慶子ママなんか、やだ、藤吾くんたら!なんて興奮しちゃってるし。

「…慶子ママ、違うから!部長は揶揄って遊んでるだけだから!」

精一杯否定するも、ただの照れ隠しだと思っている慶子ママのニヤニヤは止まらない。

「あ!そう言えば一華ちゃん。イヤリング、藤吾くんから返してもらった?」

…この年代の人の特徴だろうか、それとも慶子ママだからだろうか、ここではよくあることだが、いつも唐突に話題が変わる。

「あぁ、そういえば結局まだ預かりっぱなしだったわ。無くすといけねぇから家に置いてあるけど、これから取りに来る?」

片手で頬杖をつきながら私を見つめ、あの時みたいに色気を含んだ顔で悪戯っぽく微笑む部長。

「…行きませんっ!」

どんな理由があっても、例え部長でも男と2人きりになるのは自分の身を危険に晒すと、先日私は目の前の男に教えられたばかりなのだ。

「ふっ、上出来」

眉尻を下げて優しく微笑み、私の頭をガシガシと乱雑に撫でる。


なんだその上から目線は。


ーーその顔に憎たらしさすら覚えるのに、その手に、その表情に、心臓がドキドキと反応してしまったのは、きっとあの日のキスを思い出してしまったからに違いない。
< 57 / 158 >

この作品をシェア

pagetop