君がくれた花言葉
優月の死、これからのぼくときみ
翌日。病院へ行くと、優月の病室の前で看護師さんと医者が、優月の父であろう人に頭を下げていた。かすかに「最善を尽くしたのですが」
とかそういった言葉が聞こえてきたので、本当に優月はいなくなってしまったのだとわかった。状況を知らないフリをして優月の病室へ行く。優月の姿はなかった。足音がして後ろを振り向くと松岡さんが駆け寄ってきた。

「下村くん!」

「松岡さん…。優月、もういないんですよね。」

「…!ええ。残念ながら。」

そう言って頭を下げる松岡さん。

「やめてくださいよ!決して松岡さんが悪いわけじゃ…!」

「ごめんね。下村くん。」

「誰も悪くない。それでいいと思います。あの、花を優月に渡そうと思って持ってきたのですが。」

「まだあの病室にいることになってはいるから、一応そこに持って行って貰える?私は無理そう。ごめんなさいね。」

「いえ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。」

それだけ言って僕は病室へと向かった。
優月がいつも置いていたように窓辺に花を置き、優月が寝ていたベッドに座った。
今でも優月の温もりがベッドに残ってる気がして、まだ優月がここにいるような気がして、死んだなんて嘘のように感じた。でも現実を受け入れなくてはならない。そう自分に言い聞かせて、涙をぐっと堪え、窓の外を見た。夕焼けが綺麗だった。あぁあの時優月と見たのは朝日だったな。この綺麗な夕日も一緒に見たかった。
まだ優月とやりたいことがたくさんあるのにな。それからしばらく優月がいた時の思い出、優月がもし居たらしたかったこと、そんなことを考えて、家に帰った。
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