神殺しのクロノスタシス3
更にその翌日。

教室にて。

「すぐり君!そろそろお掃除のお時間だよっ!」

「あ、もうそんな時間?」

放課後学習会に行かなくなって、三日目になるが。

実は、勉強の方は相変わらず続けている。

学生寮のポストに、俺宛にシルナ学院長お手製の課題が入っているのだ。

だから、それをやっていた。

すると。

「?それは何の課題?そんなの出てたっけ?」

僕の手元のプリントを見て、首を傾げるツキナ。

…悪戯心が頭をもたげる。

「え?出てるよ。明日提出期限なのに。まさか、ツキナやってないの?」

「ほぇぇぇぇ!?」

がびーん、みたいな顔になるツキナ。

「し、知らなかった!どどどどうしよう!間に合うかな!今からやって間に合うかな!?」

「今から!?それはもう間に合わないなぁ~。今夜不眠不休で…いや、それでも無理かもなぁ~」

「そんなぁ~!」

ぐずっ、と半泣きになるツキナである。

本当に何て言うか…すぐ引っ掛かるよね。こういう手に。

君は暗殺のターゲットにだけは、ならない方が良い。

こんなに簡単に殺せそうな人はいない。

殺せなさそうな人ほど、ターゲットになるのだけど。

「本気にしないでよ。冗談だからさ」

「…ふぇ?冗談?」

「これは俺の、俺だけの課題。転入生だから、補習課題出されてんだよね~。俺」

「…」

ぽかーん、と間抜けな顔をして。

それから。

「もーっ!脅かさないでよーっ!」

怒った。

「脅したら、素直に脅されてくれるかなぁと思って」

「ばかばかばか」

「そう、馬鹿だから俺。勉強させられてるんだよね~」

「勉強ってなん…。…?地理?」

僕の手元のプリント課題。

それをじっとよく見て、またしても首を傾げるツキナ。

「地理の勉強…?」

「そう。普通なら…多分小学生で習う範囲?なんじゃないかな」

「うん。私これ、小学校のとき習ったよ」

やっぱり。

学院長曰く、俺達『アメノミコト』の暗殺者は、知識がとても偏ってるのだとか。

当然だ。

暗殺に必要な知識なら、完璧なまでに磨いているが。

それ以外の、暗殺者に必要ない知識は、全て切り捨てて生きてきた。

ルーデュニア聖王国の地理だの歴史だの、俺には知る必要がない知識だった。

だから習ってない。知らない。

でも、腐っても俺はイーニシュフェルト魔導学院の生徒。

魔法が使えても、一般常識の範囲の知識がないのは不味いってことで。

こうして、補習課題で補っている。

…の、だが。

「…?何で小学生の範囲を、今やってるの?」

事情を知らない人に、そこを説明するのは難しいなぁ。


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