Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

 それでも他人が作ってくれる料理はとても美味しい。わたしは炒めただけだというアキフミのカレーチャーハンを一口ふくむ。

「――美味しい!」
「口に合って良かったよ。冷蔵庫にりんごジュースの缶が入っていたけど、これは飲んでも大丈夫なんだよな」
「うん。近くの農園で採ったりんごをジュースにしているの。うちにも卸してもらっていて、サービスとして冷蔵庫に三つ常備しているんだよ」
「へえ」

 冷蔵庫からりんごジュースの缶をふたつ取り出し、こちらへ歩いてきたアキフミに教えれば、彼はテーブルに缶を置いて、向かいの席へ腰を下ろす。両手を合わせて「いただきます」と丁寧に挨拶をして食べはじめるのが彼の習慣だ。子どもの頃から母親にこれだけは躾けられたのだと言っていた。自分で料理をつくったときも、料理に向かってきちんと「いただきます」と告げるアキフミの姿は、傍から見ても清々しい。

「どうした?」
「ん。アキフミの作ったご飯をふたりで食べるなんて、初めてだね」
「そうだな。ふだんは家政婦が用意してくれるから、ネメも自炊はしないだろう?」
「掃除や洗濯と比べると、まだ苦手かも」
「今度、ふたりで作ろうか」
「ほんとう!?」

 嬉しくて声を弾ませるわたしを見て、アキフミがくすりと笑う。
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